コンプガチャ規制だけで市場は本当に適正化するのか? 答えは・・・

このページは本サイト上に掲載している『【テイルズオブゼスティリア炎上】 ヒロインキャラの離脱は何が問題だったのか?』の補足的な意味合いで記されています。事前に下記の関連記事をご覧いただけると、より理解が深まると思います。
関連記事 :【テイルズオブゼスティリア炎上】 ヒロインキャラの離脱は何が問題だったのか?
【テイルズオブゼスティリア炎上】 ヒロインキャラの離脱は何が問題だったのか?

コンプガチャショック
アイテム新商法「違法」 / コンプガチャ中止要請へ

2012年5月5日、読売新聞が一面で『アイテム新商法「違法」 / コンプガチャ中止要請へ』と報じました(こどもの日であることがとても皮肉的)。それは当時、スマホをデバイスとする多くのソーシャルゲームで取り入れられ、収益源の柱となっていた手法=コンプリートガチャ(コンプガチャ)が違法であるとするものでした。ゲームを他人よりも有利に進めるためのカードやアイテムを有料ガチャという形でユーザーに提供し、見返りとしてゲーム会社が莫大な利益を手にしていたその裏で、未成年者への高額課金が問題となって積み上がっていたわけです。
そして、消費者庁はこの日から僅か2ヵ月程で実際の規制までこぎ着け、コンプガチャは姿を消しました。収益源の1つを失ったゲーム会社の株価は軒並み値下がりし、2015年時点でも業績改善が見込めない会社すら存在しています。
参考 :コンプガチャは景品表示法違反、消費者庁が正式見解

このコンプガチャ規制とはどのように行われたのでしょうか?
また、この規制で本当に問題は解決されたのでしょうか?
 
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コンプガチャ規制
コンプガチャとは、有料ガチャで特定のレアカードを指定枚数そろえると、さらにレア度の高いカードがもらえるという仕組みです。消費者庁はこの仕組み自体が景品表示法(以下「景表法」)で禁止されている「絵合わせ」に該当するとし、規制しました。今では当たり前のように違法と解釈されているコンプガチャですが、規制前後の時期においては当事者のゲーム会社はもちろん(参考)、消費者庁自身も規制発表の3ヵ月前まで違法性があるという認識をもっていませんでした(参考)。
しかし、消費者庁は相談件数が増えたことにより方針転換、一気に規制の流れとなりました。

ガチャは射幸心を煽っていたのか。

コンプガチャを含むガチャ全般で問題とされたのは、「射幸心を過剰に煽るような運営をしているのではないか?」という点です(参考)。なので、本来ならば風営法のような射幸心に関する法律をもって規制されるべき類いのものだといえます。
コンプガチャでいえば、例えば5枚揃えればコンプとなるときに、4枚までは比較的簡単に集まるのに最後の1枚がなかなか揃わないといったもので、このとき、最後の1枚を意図的に低い確率に設定しているなら射幸心を過剰に煽っていたと解釈できますし、コンプするまでの投下資金の期待値がサラリーマン平均月収に匹敵するような高額なものであったり、しかもそれを子供が制限なく購入できたりする状況も広い意味で射幸心に絡む問題です。
しかし、この場合、規制導入の際に他業界も広範に巻き込むことになり、かつ風営法自体を改正する必要もあることからおそらく時間がかかると踏み、多少強引な法解釈でもスピードをもって対処できる景表法をもって最もクロい部分を狙い撃ちし、残ったグレーゾーン部分は業界自身に自主規制させる方法をとったと容易に想像できます。

強引な法解釈
「企業の公正な競争の確保」と「一般消費者の利益を確保」という2面性

景表法は元々、独占禁止法が禁止する「不公正な取引方法」のうちの一つ「不当顧客誘引」という行為体系の明確化のために制定されたものです。当然、所管官庁は公正取引委員会でしたが、2009年の消費者庁発足に合わせて移管された際、同法1条の目的規定が「公正な競争の確保」から「一般消費者の利益を確保」に書き換えられたという経緯があります。
つまり、景表法は競争法的側面(公正な競争を確保することで、結果として消費者の利益となる)と消費者法的側面(消費者の利益が害されないために、競争の方法を縛る)という2つの面を併せ持つわけです。

コンプガチャがまだ正当化されていたとき、当然、コンプガチャを提供していた各ゲーム会社にも弁護士がついていましたが、軒並みこの競争法的側面でこの問題を捉えていたように思います。コンプガチャはコンプしたことによって得られるレアカードを含めて「取引目的・取引対象」であるという解釈です。ようは、カードはゲームを構成する商品であり、コンプガチャはそれ自体が1つの高額な商品というだけであって、景品ではないというものです。また、このコンプガチャは他の会社も同様の方法で提供しているので、競争を歪めているわけではないし、そもそもガチャは個別ゲーム内におけるカードの提供方法の話なので、不当に顧客を誘引するといった考えにも厳密にはミスマッチです。

消費者庁はこれに消費者法的側面からNOを突き付けましたが、結果、レアカードが景品(=経済上の利益)となるかは消費者側の主観に基づいてのみ決定されるという強引な法解釈を適用することになっています。これだと消費者の気まぐれで適法だったことが突然ひっくり返って違法とされ、最悪の場合、返金沙汰になるといったリスクを企業側が背負うことになり、自由競争を過剰に抑制する副作用があることは間違いありません。

自業自得
当事者として批判の矢面に立たされたGREEが居を構える六本木ヒルズ森タワー

しかし、このような強引の法解釈を持ちだして規制することさえ「致し方なし」とされたのは、それほどガチャ課金のあり様が監督官庁や社会の多くの人々から問題視されていたかの証に他なりません。これは当事者の1社だったGREEの取締役である秋山仁さんが

社会にどんな影響があるか、思いをはせる感度が低かった

出典:産経ニュース

と語ったことからも如実に分かります。

問題は解決したのか?
なくならないトラブル

なくならないトラブル

この規制によってコンプガチャは一掃されたわけですが、有料ガチャというシステム自体はなくなったわけではありません。そして、残念ながら規制以降もトラブルが絶えません。
参考:
国民生活センターに多数寄せられる相談
【DQMSL(ドラクエ)】パワーアップバグ問題=バグ隠蔽詐欺事件の全貌【返金騒動】
スマホをプラットフォームとするソーシャルゲームは、参入障壁が低く、多くのメーカーが雪崩れ込んだため玉石混淆の様相を呈していて、かつユーザーもそれぞれのゲームに分化してクローズドなコミュニティーを成立させていることから、何か問題が起きてもコンプガチャのときのように大きく話題になることは少なくなっています。
しかし、それは問題が消えたことを意味しているのではなく、多くのユーザーが大なり小なりトラブルに見舞われている、つまり、問題が薄く引き伸ばされたと理解するのが適切です。


歴史は繰り返すのか?

法改正に伴って大幅縮小した消費者金融業界

このような一連の現象は、悲惨さのレベルの違いこそあれ、過去の消費者金融業界が辿った道筋と非常に酷似しています。

消費者金融業界では、1970年代後半〜80年代初頭にかけて、まずサラ金問題が表面化します。返済を督促するため、昼夜を問わず自宅へ押しかけて恫喝あるいは電話攻めにし、それらは借り手当人だけでなく、その周りの家族や親族、友人にまで及びました。このとき、法的には(関連法などがあるにはあったものの機能することはなく)実質ノールールでした。
そこで、この最も悪質な部分を規制するため、貸金業規制法が成立しました。
しかし、規制法成立により1人に対して多額のお金を貸せなくなった貸金業者は、多くの人達にそこそこの金額を貸すスタイルにシフトしていきます。もちろんキツい取り立てといった体質も変化なしでした。これにより、被害が薄く広く分散するようになり、一旦は被害がなくなったかのように思われましたが、時間経過とともにその悲惨な実態が明らかになっていくわけです。
その間、貸金業者は、上場した上で一流企業の証ともいえる経団連入会まで果たし、ポップなCMを大量に流して社会に浸透していました。そして、世界長者番付で日本の消費者金融の経営トップが次々とランクインしてしまうような高収益を上げていました。
関連記事 :チワワやタイツのダンサーが「ご利用は計画的に」と呼びかけた結果起こったこととは?
どうでしょう。似ていると思うのは私だけでしょうか?

新しく生まれた市場、未来は未知数

ソーシャルゲームやPCゲームなどのオンライン課金システムは、新しく生まれた市場であり、既存の法律がうまく適用できない分野であるといえます。ようは実質ノールールなわけです。そこでガチャという非常に効率のよい課金システムが導入されたことで、多数の課金問題が発生する一方、多くの企業が空前の高収益をあげています。
そこに悪質と思われるコンプガチャが登場し、まずこれを景表法で抑えこみました。←いまココ

ちなみに、消費者金融業界では規制後も悪質な行動がなくならなかった結果、2007年に改正貸金業法が施行され、統制経済さながらの上限金利規制や総量規制が導入されました。
これを今のガチャ課金風に表現するなら、

  • 1ゲーム当たりの課金上限は毎月3,000円。
  • ガチャ1回の価格は最大100円。
  • 最大価格のガチャには最高級レアカード or アイテムが10%以上の確率で含まれなければならない。
  • レアカードの排出確率を明記(同水準のレアカードが複数含まれる場合は、その個別ごとの確率も明記)。
  • 過剰課金の黙認、告知なしの確率操作などが認められた場合は業務停止命令を受ける。
といった感じでしょう。

問われているのはモラル
ゲーム業界のトップランナー

新しい市場は私たちに未知で楽しい体験をさせてくれ、本来歓迎すべきものです。
ソーシャルゲームやPCゲーム、コンシューマーゲームにおけるダウンロードコンテンツ(DLC)を含む広い意味でのオンラインゲーム業界は、そんな新しい市場の1つです。さらに、この市場は日本の既存コンテンツとの親和性が高く、日系企業がグローバル市場で戦える可能性を大いに秘めています。
その業界がマネタイズ手法として使う課金システムには利便性や手軽さといった利益が確かにありますが、そこだけを強調し、コストがないように振舞っているのはおかしいでしょう。

ゲーム会社は、たとえ明文規定がなくとも、自社とユーザーの共栄関係を重視して、ユーザーに適切な意思決定ができるよう充分な情報を開示し、利益があげられる水準でかつ未成年でも無理のない課金バランスを設定する必要があります。そこで問われているのはモラルです。
そして、その手本となるのは、業界のトップランナーたる大企業です。
だからこそ、私は『テイルズオブゼスティリア』の衣装DLC問題にみる発売元のバンダイナムコの対応には憤りを感じるし、開発スタッフの振る舞いは余りにもモラルが欠如していて、正直ガッカリしました。
関連記事 :【テイルズオブゼスティリア炎上】 ヒロインキャラの離脱は何が問題だったのか?
一方、モラルだけ成立する市場はあり得ませんので、消費者庁は(人手が足りないのであれば経産省でもいいので)、消費者に完全情報かつ対等性が確保され、かつ企業側にも裁量の余地があるルール作りを急がなければなりません。

市場を育てること
市場育成ゲーム

大事なのは、この生まれたての市場やそこにいる企業を叩き潰すことではなく、適切なルールの網をかけて健全な市場にしていくことです。そして、その市場をゲーム会社のモラルと消費者の監視が支えます。それがゲーム会社の利益になり、ひいては消費者の利益に繋がっていきます。

これは皆が参加者の、壮大な市場育成ゲームなのです。



キーワード「独占禁止法」の注目ランキング by amazon (2015/3/37)



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