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FF(ファイナルファンタジー)といえば、押しも押されもせぬ日本を代表するゲームです。神秘的な世界観、美麗なグラフィック、名曲揃いのサウンド、ドラマチックなシナリオといった要素を併せ持ち、TVゲーム黎明期から良質なタイトルを発表し続けている人気シリーズで、国内ファンはもちろん、海外ファンも多数存在しています。

しかし、今、その人気シリーズが迷走しています。

参考:
『Amazon』に掲載の『FF13』レビュー! 有用性の高いレビューほど酷評
ファイナルファンタジーXIVをご利用のお客様へ重要なお知らせ(公式に低品質だと認め、異例の社長謝罪)
海外でも惨憺たる評価

度重なる発売延期、完成度や品質の低下、止まらない酷評。ネット上では各タイトルの内容から企業体質に至るまで、多くの点で批判的な意見が飛び交っていますが、ここでは家庭用ゲーム機にて発売されたタイトルにフォーカスして、原因や解決策について考えていこうかと思います。
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入口となりうるゲーム
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出典:Final Fantasy History by ファミ通

FFは、もう1つの人気シリーズ『ドラゴンクエスト』とともに「国民的RPG」とも言われるほどのブランドを確立しています。FF◯(◯の中に数字が入る。最新作は14)と称されるナンバリングタイトルは、発売されれば日本国内だけでも100万本以上のセールスを記録し、グローバルでみれば500万本以上売れることも珍しくありません。もちろんナンバリングタイトル以外にも多数の派生商品がありますが、FFブランドに支えられて、競合商品と比較して遥かに大きなセールスを叩き出します。

任天堂のファミコンやスーパーファミコンが全盛だった頃、ゲームをするには家庭用ゲーム機がほぼ必須でした。しかし、昨今、スマホやPCなど、ゲーム機として使用できるデバイスが異常なほど増えたことにより、家庭用ゲーム機からユーザーが流失、特に普段あまりゲームをやらないライトユーザー層の流出が起こっています。最初にやったゲームはスマホアプリだという人も今後増えていくでしょう。
そんな厳しい市場環境の中でも、FFの場合、コアゲーマーはもちろんのこと、ゲーム初心者やライトなファンが持っていない家庭用ゲーム機を新たに購入してもプレイしたいと思わせるほどの強いブランド力を持っています。そして、普段ゲームをしない人たちが多額のコストを支払っても満足できる良質な内容を伴っていました。
ゲームを初めてやる人、スマホゲームはやっているが家庭用ゲーム機のタイトルはやっていない人、昔ゲームやっていたけど最近は忙しくて手をだしていなかった人など、このようなライトユーザー層を自分たちの市場に誘引するのは本当に大変なことです。これまでのFFは、このライトユーザー層の入口として見事に機能していました。

しかし、私は、直近10年間で発売されたFFタイトルがことごとく、この「ライトユーザー層の入口であること」を忘れていると感じています。そして、そのことこそFF迷走の最大の要因だと考えています。

FF12がケチのつけはじめ
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出典:SQUARE ENIX『Final Fantasy Ⅻ』

この問題が初めて顕在化したのは、2006年3月、PS2(PlayStation 2)用ソフトとして発売されたFF12です。
この当時、海外では日本のRPGに対して非常に批判的な意見が多くなっていました。ドラクエ・FFで一時代は築いたものの、基本的なシステムはいつも同じようなものばかりで、先進的なものが開発されない。それでも満足しているメーカー・ユーザーは古典的、保守的とさえ言われていました。
当然、日本のRPGの代表選手ともいえるFFにもその批判は及んでいました。そんな中、海外のファンの批判をはね返すべく開発されたタイトルで、そのシステムは驚くほど革新的でした。

よく出来ていた“らしい”戦闘システム
FF12で取り入れられたのは、通常マップから画面が切り替わることなくバトルに移行し、かつ時計が原則動き続ける「シームレス+リアルタイムバトル」でした。このシステムは、現在PC上のオンラインゲームでよく見られますが、この当時はまだポピュラーな存在とまではいえず、あまつさえそれを家庭用ゲーム機のソフト(オフラインゲーム)に完全な形で実装させたものはほぼ皆無でした。

この「シームレス+リアルタイムバトル」のキーポイントは主に3つです。
従来のFFのバトルシステムに空間の概念が追加
味方キャラクターの行動を操作
ヘイトの存在
①は戦闘中もフィールド上を自由に動き回れるということです。攻撃手段1つ1つに射程や効果範囲が設定され、効果的に攻撃するには敵の射程外から遠隔武器で先制攻撃したり、うまく動きまわって敵を1ヶ所に集めて一網打尽にしたりするなどの戦略が必要となります。このような空間概念の追加は直感的にも分かりやすいかと思います。

しかし、②と③は直感的な理解が難しいです。


② 味方キャラクターの行動を操作

オンラインゲームにおける「シームレス+リアルタイムバトル」は複数キャラクターが入り乱れる大人数バトルが最大の特徴とされます。このとき、1人の味方キャラクターは1人の人間(実際に遊んでいるのユーザー自身)とリンクしているので、事前にチーム内で話し合いをもち、役割を決めてバトルに臨むことになります。
しかし、FF12ではこれを1人で全て操作することになります。これをまともにやってしまうと、あまりにも操作が忙しくなってしまうので、通常は1人のキャラクターだけ操作可能とし、残りはAI制御(コンピューターで自動制御)させるのが一般的です。ですが、大抵このAIがバカで、ユーザーが「こうしてほしい!」と思うことを実行してくれません。
これを解決するため、FF12では『ガンビット』というAI制御システムが存在します。例えば、
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というように事前にAIの行動を決めておくことができます。この『ガンビット』で接敵すると、AIはまず真っ先に「盗む」を実行し、その後味方キャラクターが一撃でも敵にダメージを与えれば(敵のHPが100%ではなくなるため)、「たたかう」を実行するようになるわけです。このようにAIの行動を事前にユーザー自身で設定しておくことができるわけです。


③ ヘイトの存在

味方の行動には全て、ヘイトといわれる数値がユーザーからは見えないように設定されていて、敵はこの数値が最も高くなっている味方を優先的に攻撃してくるというものです。
このヘイトコントロールと先述の『ガンビット』をうまく組み合わせると、全ての戦闘を自動で行えるほど、味方キャラクターをうまく立ち回らせることができます。
例えば
味方A:徹底的に防御特化の重装備にし、とにかくヘイト値が高い行動を繰り返し、敵から攻撃ターゲットにされる。
味方B:物理攻撃特化の装備にし、敵を攻撃。
味方C:魔法攻撃特化の装備にし、敵を攻撃。味方AのHPが減ったら回復魔法を使用。
味方Aは防御に優れているので、攻撃を受けても倒されることはほぼなく、その味方Aが一身に敵の攻撃を受けてくれるので、他の味方B・Cは防御を捨てて攻撃特化にしてしまい、高い攻撃力で敵をどんどん倒していきます。バトル中一切手動入力せずに敵を完封できたときはかなり爽快です。

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囮役である味方Aのガンビット例


ガンビット? ヘイト? そんなことよりレベルを上げろ!

しかし、この爽快さを感じたユーザーはFF12を購入したユーザーの本当にごく一握りでしょう。なぜなら、ゲーム中の基本操作や効果的な使い方を説明するチュートリアルにおいて、②は本当に基本中の基本的なことしか説明されず、③のヘイトにいたっては説明すらされないからです。

特に③に関してはかなりタチが悪く、ゲーム中にこの存在に自然に気づく可能性はほぼゼロに近いです。ゲーム中に最も接敵するアンデッド系のモンスターがこのヘイトを無視して、HPの最も低い味方を優先して攻撃してくるからです。この他にも、最も近くにいる味方を優先して攻撃してくる敵や特定のキャラだけ狙ってくる敵など、ヘイトを無視する敵は多く、ユーザーから見れば、それらの敵と一度にバトルするような場面では敵がランダムに味方を攻撃してくるようにしか見えないからです。

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出典:SQUARE ENIX『Final Fantasy Ⅻ』

仮にエスパー的ななにかを発揮してヘイトの存在に気づいたとしても、まだハードルが待ち構えています。どの行動がヘイトを稼ぎやすいか全く分からないからです。これを知るにはヘイトがワークする敵に対して、味方3人が同時に違う行動をして・・・みたいな検証作業を延々とやるはめになります。そんな手間をかけるくらいならレベルを上げて、力ずくで突破する方がよほど賢い選択でしょう。

しかも、敵の強さはガンビットやヘイトを使って立ちまわることを前提でレベル調整されているため、過去のシリーズと比較してかなり難易度が高く、FF12の攻略サイトでは、「敵が強すぎて先に進めない」という質問がわんさか寄せられていました。
そして、それに対する回答は「レベルを上げろ!」でした。かなり大規模に運営されていたサイトですら、その回答です。
参考 :FF12攻略ガイド よくある質問と回答

長々と続くレベル上げ、レベルを上げても敵が強いのでザコ敵との戦闘はほぼ逃走、ボスはとにかく必殺技を連発して倒すだけの単調なバトル。これには多くの人たちがついていけず、途中でコントローラーを置く人すら出る始末でした。


よく出来ていた“らしい”戦闘システム

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出典:SQUARE ENIX『Final Fantasy Ⅻ』

②と③の全容が解明され公知となったのは発売から約2年近く経過して、手動入力なしで本作の最強モンスター『ヤズマット』を討伐した動画が動画サイトに投稿されたぐらいの頃でしょう。

FF12で採用されたバトルシステム「シームレス+リアルタイムバトル」とそれを支える『ガンビット』は、操作の忙しさやバカAI問題を解決し、オンラインゲームの特権と思われていたキャラクターが入り乱れる大規模戦闘を可能にしたということで、発売から約10年経過した2015年現在でも非常に優れていると評価されています。
が、それは多くのユーザーにとって、良く出来ていた“らしい”ということを後から知ったに過ぎず、実感を伴ってはいません。ユーザーにとっては、ただただ苦痛な記憶としてしか残っていないのです。
そして、それはユーザーに対して必要なことを説明しなかったという「不親切さ」からきています。

ちなみに、このシステムをゲーム初心者にも楽しんでもらうには、少なくとも
  • ヘイトの説明
  • ヘイトを稼げる行動の例示
  • ヘイトを無視する敵の存在の例示
  • 応用的なガンビットの組み方(魔法『デコイ』の使い方、味方を攻撃する『計算尺』系武器や属性装備の組み込み方など)
  • 各キャラクターに役割を振り分けることの意味
を説明する必要がありました。
しかし、本作スタッフが全面監修したアルティマニアを見ても、実はうまくワークしないガンビット例が堂々と掲載されていたりしているので、作ったはよいものの、一体自分たちが何を作ったのかスタッフ自身もわかっていなかったというのが真相かもしれませんが・・・

主人公そっちのけのシナリオ
プロローグ

2年前、大国であるアルケイディア帝国が突如、隣国のダルマスカ王国に侵攻。ダルマスカ王国は徹底抗戦するも圧倒的な武力差の前に苦戦し、停戦を模索し始める。
しかし、その停戦合意の締結直前、国の英雄とされていたダルマスカ王国軍の将軍が主君であるダルマスカ王を売国奴だとして暗殺、停戦合意は幻となり、最終的にダルマスカ王国は独立を失った。

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Wikipediaですら否定的な「主人公の物語」

このプロローグの2年後がFF12本編の舞台となります。主人公は、身分は違えど、帝国侵攻を受けた際に近親者をなくしたヴァンとアーシェです。

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出典:SQUARE ENIX『Final Fantasy Ⅻ』
ヴァン

ダルマスカに住む一般市民の青年。唯一の家族であった兄は、ダルマスカ王暗殺の場面にたまたまいあわせたことで国王殺害という無実の罪を疑われ、苛烈な拷問を受けた末、夭折。
若くして天涯孤独となってしまったヴァン。親しい人たちの優しさに支えられて、明るく振る舞っているが、兄の死は依然として心に暗い影を落としていた。



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出典:SQUARE ENIX『Final Fantasy Ⅻ』
アーシェ

アルケイディア帝国に攻め滅ぼされてしまった小国ダルマスカの王族の生き残り。実の父や夫が戦争によって死んでいく中、自身も死亡したとされていたが、密かに救出・保護されていた。ダルマスカ復興を目指してレジスタンス活動に身を投じているが、実際にはアルケイディア帝国への復讐心のみに突き動かされているに過ぎなかった。


この2人を主人公として物語が進行していきます。このシナリオは非常に評判が悪いです。あまりの批判の多さに、中立を謳うWikipediaですら否定的な解説を記載しているくらいです。


序盤は「ヴァンの物語」

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出典:SQUARE ENIX『Final Fantasy Ⅻ』

もはや全方位から集中砲火されていますが、冷静にプロットを眺めてみると序盤から中盤(具体的にはブルオミシェイスあたりまで)にかけては非常にうまくシナリオが進行していきます。ここで主に描かれるのはヴァンが「兄の死」を乗り越える過程です。自由と力強さに憧れ「空賊になりたい」と夢を語るものの、実際には無力で、帝国の下っ端兵に対してスリをしてウサを晴らすだけの惨めな状況だったヴァンが、立場は違えど同じように戦争で愛する家族をなくし、その呪縛に囚われ続けているアーシェと出会うことで、初めて自分を客観的に見られるようになります。
アーシェは行動原理に祖国復興という大義を掲げているものの、それは都合のよい建前に過ぎず、実際には自身の復讐心を満たしたいためでしかありません。さらに、そんなアーシェが起こす一連の行動は、政治に疎いヴァンにすら、どれも希望ある未来に繋がっているとは思えません。それなのに、違和感を感じたアーシェの行動やそれを支える動機は、ヴァン自身のそれとそっくり同じものであり、そうしてヴァンは自分の振る舞いの意味に気づくわけです。
そして、強くあろうとするがゆえにこれまで隠し続けてきた弱音と本音を仲間に初めて吐露することで、「兄の死」の悲しさで先に進めない状況自体を自分に対する言い訳だと認識して、「目標をみつけたいんだ」という心境に至ります。シナリオ中盤まではこのようにヴァンの心境が移りゆく過程をキャラクターの動きを通して丁寧に描いています。

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出典:SQUARE ENIX『Final Fantasy Ⅻ』


中盤以降は「神と人の物語」

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出典:SQUARE ENIX『Final Fantasy Ⅻ』

一方、中盤以降、明らかにシナリオのトーンが変わってしまい、このような印象はほとんど感じられません。これは世界観重視でシナリオ進行させているからです。

中盤以降でシナリオのテーマとなっているのは、「神と人の関係」です。
FF12の世界は、一般民衆ではほとんど認識できないものの、実は複数の神の支配のもとにあり、その神たちは自らの意に沿わないという理由のみで人間の歴史にしばしば介入してきました。これを良しとしない神の1柱が主人公たちの国を滅ぼしたアルケイディア帝国の権力者であるヴェインとシドの2人に真相を教え、彼らは神たちの支配からの「人間の独立」を志向し、行動を起こしていきます。

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出典:SQUARE ENIX『Final Fantasy Ⅻ』

彼らは、各地の王族が持つ「王の証」こそ、神たちが人間の歴史に介入するときに使う道具であることを知り、これらを集めて研究することで、その力を人間でもコントロールできるようにしようと考えます。これが実現できれば、神が歴史に介入してきても返り討ちにすることができるかもしれないからです。
しかし、「王の証をよこせ」と各地の王族に告げても素直に従う可能性は低く、真相を教えて説得しようにも、真相を知った途端、神の力を悪用する者が出てくるのは確実。そして、ちんたらしていると、神たちがヴェインとシドの行動に気づいて先回りされてしまう恐れもありました。

そこで、彼らが選択したのは、犠牲を払ってでも確実かつ迅速に目的が達成される「戦争」でした。プロローグで描かれた戦争はまさにこれです。
しかし、意味も分からず攻められた方はたまったものではありません。主人公たちはもちろんですが、彼らは途方もないほどの憎悪をその身に集めていきます。
そして、最後は主人公たちに敗れるものの、神から人類への最大の影響手段である「王の証」を破壊することには成功し、神が介入しない新たな歴史を歩み始める人間たちの踏み台として散っていくのです。

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出典:SQUARE ENIX『Final Fantasy Ⅻ』

このようなシナリオ構造は、SF系エンタメ作品などに登場するポピュラーな構造で、最近では名作アニメとして名高い『コードギアス 反逆のルルーシュ』なんかがまさにこれですね。FF12も忠実にこの構造を踏襲しています。

主人公たちとは終始敵対するヴェインとシドが掲げる「人類の独立」という理想は、他の作品であれば、主人公側が掲げていても全くおかしくないものです。いつ神の怒りをかって滅ぼされてもおかしくない状況を心から憂い、誰にも理解されない理想を掲げ、その実現のために必ず出る犠牲も必要コストとして織り込んで、最終的な責任をとる覚悟もある。ある意味、純粋な理想主義者です。そして、最後は、自らの死によって悲願を成就するわけです。
FF12スタッフもこれらのことをきちんと理解していて、それは理想を部分的ではあれ達成したラスボスに対して、本編中で「もはやこの世には不要」と表現した『不滅なるもの』と名づけたところからも伝わっています。

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出典:SQUARE ENIX『Final Fantasy Ⅻ』

しかし、ユーザーの大多数、特に普段ゲームをしないようなライトユーザー層の人たちが「この素晴らしいシナリオ構造に感動した!」となるでしょうか?

おそらくならないでしょう。

なぜなら、このようにシナリオを分析して理解するのは、多くの文学作品に触れて訓練された人や私を含めた評論家きどりだけであり、圧倒的マイノリティだからです。


主人公たちへの共感 > 世界観

では、ユーザーのマジョリティがシナリオに求めているのはなんなのでしょうか?
それは「主人公が勝利してスカッとした!」とか「願いや努力が報われてよかった」といった感情移入がもたらす「共感」です。つまり、「主人公たちの感情の変化」が納得できる形で描かれることが大事だということです。

FF12の中盤以降では、上記の大きな世界観の物語を進行させるため、「主人公たちの感情」が無視されていくことが、素人目にも明らかなほどに分かります。だって、ヴェインやシドの精神的な葛藤や表面上の政治闘争・武力戦争はほぼ全て、主人公たちとは地理的にも時系列的にも無関係なんですもん。
では、それらを主人公たちがどのように知るかというと、待ってましたとばかりに説明役のキャラが登場して「帝国では今こんなことが起こっている」とか「ヴェインは裏ではこんなことをしているぞ」などと教えてくれるわけです。そして、主人公たちは「そうか。それは許せん。だが、私達には何もできないので、今は武器を探しに行こう」みたいになってシナリオが進みます・・・ これでは主人公たちの目にくっついてゲームを楽しんでいるユーザーに失笑されても当然でしょう。

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出典:SQUARE ENIX『Final Fantasy Ⅻ』

これを回避するためには、FF12の前プロデューサーである松野さんが同じくプロデューサーを担った『タクティクスオウガ』のように「ユーザー自身が世界観の重大な決定を選択」したり、「世界観に負けないくらい緻密にキャラクターの感情を表現」したりする必要があります。実際、ゲーム序盤でも緩やかに世界観シナリオが進行していますが、それに負けないほどヴァンの成長過程が描かれているので、違和感を感じません。

しかし、中盤以降、主人公側でフォーカスされるアーシェはほとんどその描写がありません。せっかく同じような環境におかれたヴァンがそれを克服したのに、その後、アーシェとヴァンの建設的な会話はほとんどなく、アーシェがヴァンに影響を受けるような描写もありません。それどころか、アーシェは他の仲間とも自身の葛藤に関する本質的な会話がほとんどなく、仲間というよりも、利害関係だけでたまたま一緒にいる人たち、みたいな印象すら受けてしまいます。ヴァンが親しい者の死の呪縛を克服した時点で、アーシェもいずれかの段階で克服するのは全てのユーザーの目には明らかなので、ユーザーが見たいのは「克服した結果」ではなく「克服する過程」に移っているのに、その過程をすっ飛ばして、突然、

私は、聖女なんかじゃない!!

などと目覚められては、ユーザーからすれば「おいおい、ちょっと待てよ。もう1人で旅しろよ・・・」となるだけです。

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出典:SQUARE ENIX『Final Fantasy Ⅻ』

世界観重視でシナリオを進行させる作品は、ほとんどの場合、マクロ(その世界観の歴史や理念)のエンディングを優先させるため、ミクロ(キャラクターの感情)を犠牲にし、結果、とてもつまらない作品になります。FF12はまさにこの点が問題視されたタイトルだったといえます。

スタッフの苦悩と言い訳
本作では、開発途中でプロデューサーの松野さんが病気で降板となり、河津秋敏さんが急遽後任になりました。大型プロジェクトを率いているリーダーが変更になるというのは、大きな方針から個々の事務手続きにまで影響を与えることであり、このときのスタッフの方々の苦悩は察するに余りあるものがあります。もちろん、最後まで手がけられなかった松野さんの無念や、難しい状況を引き継いだ河津さんのご苦労も十二分に理解できるものです。

しかし、商業作品である以上、アウトプットで純粋に評価されるべきだと私は思っています。

そのような観点でみた場合、多くのユーザーはFF12をプレイしても、その面白さは理解できないものであって、あまつさえ次のシリーズもやってみようとは思わないでしょう。つまり、FF12はFFシリーズが築いてきたブランドに大きなケチをつけたのは間違いありません。この意味で、プロデューサーの松野さんや河津さんの責任は極めて重いものがありますし、その原因をつくったバトルシステム担当の伊藤裕之さんと前廣和豊さん、シナリオ担当の渡辺大祐さんと生田美和さんも非難は免れません。

特にシナリオ担当の渡辺さんは、エンディングにおけるアーシェの唐突過ぎる恋愛描写を手厳しく批判された際、「FF12のシナリオは解釈の余地を残した」といった趣旨のことを言い放ちました。

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批判を受けてでのその発言ですから、つまり、その意味するところは「その表現が理解できないのはユーザー自身の考えが未熟だからだ」ということであり、自らの責任を転嫁させるような行為といえます。

自称クリエイターの方々が言う「解釈の余地を残した」作品の99%は、ただ単に描写が稚拙なだけの駄作です。解釈の余地とは、プロットとしては矛盾なく、かつ納得できる形で決着しているのに、その決着に至るまでにまかれた材料をよく見ると全く違う結論が導き出すことが可能であることで初めて成立し、同じFFシリーズであれば、FF8でいわれる『リノア=アルティミシア説』、スクウェア・エニックスから発売されたものであれば『ニーア・レプリカント』のエンディングの意味みたいなものを指します。FF12でも各表現についてあれこれと言われていますが、それは結局のところ、本来描かれているべきものが欠けていることがその主たる原因であり、ゲームの締めくくりに前置きなく挟まれる恋愛描写はその典型です。それに対して、「解釈の余地を・・・」うんぬん言うのは、自らの無能さをおおっぴらに喧伝するようなものであって、愚かしいことこの上ない。厳に慎むべきでしょう。

続きは次の記事へ :FFの迷走について真面目に考えてみた。 Ⅱ

※ 主にFF13、FF13-2、LRFF13(ライトニングリターンズ)の内容について言及しています。


おまけ(for FF12 Players)

FF12のエンディングは、アーシェがマイクを使って演説している中、真っ先にバハムートへ駆け出すヴァン。それを見てバルフレアとパンネロが慌てて追いかける。バルフレアだけ素通りさせてパンネロだけ止めるフラン。最後にアーシェが「ヴァンー!バルフレアーー!!」と叫ぶ。
これでよかったんでは・・・



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コメント : 2

. 匿名コメンテーター 2016/11/30 22:29

アンデッドはヘイト無視はしませんよ
瀕死状態の味方を優先的に狙ってはきますが

. K_shell 2016/12/01 11:13

>> 1さん

コメント頂き、ありがとうございます。
FF12におけるアンデッドの行動スクリプトは、優先度が高い順に以下の通りとなっています。
① ヘイトが一定量以上のキャラクター
② HP40%未満のキャラクター
③ 残HPが最も低いキャラクター

つまり、ヘイトが高いだけではターゲットをとれず、一定量溜まるまではヘイトを完全に無視されます。また、マップ上のアンデッドに対してヘイトコントロールできたとしても、アンデッドはパーティー近くの地面から次々とポップするため、それらのアンデッドと接敵した段階では当然ヘイト0ということになり、やはりヘイトを無視して行動されるわけです。
このような敵は通常、ヘイトを無視するモンスターとして分類されます。
正確な説明をするとこのように長文となってしまうため、本文中では「ヘイトを無視」とだけ表記しました。

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