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出典:SQUARE ENIX『Final Fantasy XIII-2』『FABULA NOVA CRYSTALLIS』

国民的RPGとまでいわれるほど、日本を代表するゲームであるFF(ファイナルファンタジー)が迷走していることに関して、家庭用ゲーム機にて発売されたタイトルにフォーカスして、原因や解決策について考えるページです。
前記事 :FFの迷走について真面目に考えてみた。 Ⅰ

※ 主にFF12の内容について言及しています。

信用を回復させたのは「時間」
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FF12がブランド価値を毀損させてしまったFFシリーズですが、次作にあたるFF13は堅調な売上を記録します。スクウェア・エニックスの2010年3月期のアニュアルレポートを見ると日本国内では185万本、全世界合計で555万本を売り上げています。FF12は日本国内で推計222万本、全世界合計で約500万本(参考)でしたので、大健闘といえます。
これは、開発期間が長期化したことがプラスに働いたからだと私は思っています。日本ではほとんどのユーザーから蛇蝎の如く嫌われていたFF12ですが、オンラインゲームが盛んな欧米を中心にバトルシステムの部分が見直され、その流れを受けて日本でもFF12の再評価が進みました。これによって、「ど〜せまたFF12みたいなクソゲーだ」といった意見がシュリンクし、FF13の前評判が必要以上に落ちずにすんだといえます。
加えて、対応ゲーム機がPS2からPS3(PlayStation 3)に変更されたことでユーザーの想像以上にグラフィックが進化し、クリスマス商戦のまっただ中という絶好の発売日前後にあらゆる媒体でその美しいゲーム画面が取り上げられるなど、マーケティングも効果的に機能していました。


しかし、、、、、、
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間違いなく駄作だったFF13
批判が集中したのは「一本道シナリオ」

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出典:SQUARE ENIX『Final Fantasy XIII』

amazonのカスタマーレビューやブログなどに書かれたゲームレビューを見ても一目瞭然ですが、本作の最大の特徴は「一本道シナリオ」です。

RPGは本来、キャラクターの次の行動を「選択できる自由」が広く与えられていることが特徴とされます。メインストーリーを進めること、サブイベントをこなすこと、レベル上げに勤しむこと、武器を買うためにお金を集めること・・・これらの行動のうち何を選択するかはプレイヤーの自由裁量に委ねられていて、プレイヤーの分身たる主人公は、当たり前ですがその意思決定に逆らわずに行動しますので、プレイヤーはより主人公への感情移入を強くしていきます。
前作FF12はこの「選択できる自由」を異常なほど広くしたタイトルといえますが、FF13はこの自由を一切認めないタイトルといえます。

RPGの伝統から完全にはずれ、プレイヤーの行動を著しく縛るFF13のスタイルは、当然ながら賛否両論を巻き起こし、肯定派からは「シナリオに集中できた」「操作を自然に覚えられた」と賞賛され、否定派からは「これはゲームじゃない。ゲーム機専用ムービーだ」「終盤まで続く壮大なチュートリアル」と揶揄されました。


破綻していたシナリオ

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出典:SQUARE ENIX『Final Fantasy XIII』

しかし、両派が共通して批判したのは、シナリオの出来です。このシナリオのレベルの低さはかなり酷いものがあり、一言で表現するなら「神頼みシナリオ」といえます。

FF13では、月と地球どちらにも人間が住み、それぞれ独自の文化を形成している設定です。当然、月もしくは地球に住む人間はそれぞれ違う神(この神は霊的なものではなく実物神)を信仰し、生活様式も違います。そして、この2つの星は互いに憎みあっていて、過去には戦争も起こしています。

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出典:SQUARE ENIX『Final Fantasy XIII』

そんな状況ですので、敵側の星の情報は完全に統制され、一般民衆からすると敵側に少しでも関係するという人やモノは非常に恐れられています。
そんな中、過去の戦争のときに地球から月に攻めこんできて、激戦の末死んだと思われていた敵側の神の1体が突然復活し、近くにいた人間をその神の下僕にしたところから物語がスタートします。
この神の下僕になった人間には、神からイメージ映像みたいなものを見せられる形でぼやっとした何らかの使命を与えられ、この使命が果たせないとモンスターとなり、使命を果たせても身体がクリスタルとして結晶化してしまいます。つまり、事実上何をしても人間としては死ぬこととなり、かつ敵側の神の下僕ともなれば、味方である月の一般民衆から猛烈な差別や迫害を受けることになります。
FF13では近親者や恋人がこの敵側=地球の神の下僕に選定されてしまった人たちが主人公となります。主人公たちはそれぞれが大切に思う人を何とか救おうとしますが・・・

誰一人としてその解決策を知りません。それどころか、結局、最後まで分かりません。

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出典:SQUARE ENIX『Final Fantasy XIII』

ゲーム序盤はとにかく今後の方針を巡って延々と喧嘩が続きます。
当たり前です。誰もどうすれば正解か分からないですから。
当然、ゲーム内のキャラクターと同じ情報量しか持たないユーザーも、誰が正しいことを言っているか分からないので、誰にも感情移入することなく、それを薄ら寒い思いをしながら見続けることになります。
その後、主人公たちは自身らも地球の神の下僕に選定されてしまい、それらを排除しようとする月の世界の勢力から逃げ惑うことになりますが、逃げる先々で奇跡のような幸運が起こります。そこで、そんなことが続けて起こるのは自分たちが正しい行動をしているためだと考え始めますが、実はそれは黒幕である味方側の神(つまり月の神)が裏で糸を引いているだけで、それが明かされるゲーム中盤以降では、その神が
「あそこへ行け」
といい、それを受けて主人公らが
「罠だ!だけど、他に選択肢もないから、行ってみよう」
「やっぱり罠だったけど、奇跡が起きて回避したぜ!」
ということがただ繰り返されるだけです。

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出典:SQUARE ENIX『Final Fantasy XIII』

このように主体性に著しく欠ける主人公たちの行動はエンディングまで一切変わりません。困ったこと、分からないことがあったら「きっと奇跡が起こるから大丈夫」といって思考停止し続けます。


笑いどころしかないラストバトル

そして、本来なら最も盛り上がりを見せるはずのラストバトルは、FF13の場合、最も笑えるシーンとなっています。
味方側である月の神が主人公らの行動を操っているのは、いわば「自殺」するためです。神には遥か昔に自分を捨ててどこかに逃げてしまった親がいて、神は捨てられた原因を自身が未熟だからと考えて、「自殺」することで親を呼び戻そうとします。しかし、月の神は親から月を運営する以外の役割を禁じられていて、その役割を放棄することになる「自殺」はできないので、自分が運営している月に暮らす人間を利用して自分を殺してもらうことで、「他殺」に見せかけた「自殺」を画策していたわけです。
ちなみに、神の「自殺」がなぜ親を呼び戻すことに繋がるかというと、月の神が死ねば、神の力で浮かんでいる月が地球に落下し、人間が一度に大量に死ぬ。すると、その大量の魂が親の逃げ込んだ世界への入口となる穴を開ける“はず”だとご丁寧に説明してくれます。
ここまででもツッコミどころ満載ですが、月の神と主人公らが対峙するラストバトルでは
月の神「私は死にたい!殺せ!」
主人公ら「ふざけるな!おまえを殺す!」
といったようなやりとりが展開されます。

まさに「えっ。ちょっとまって。えっ。ギャグなの?」状態です。

ちなみにこんなアホなシナリオはさすがにないだろうと、神の意図に従わずに主人公らが全滅することが正解と信じラストバトルを放置プレイしたユーザーは私だけではないはず・・・
残念。それはゲームオーバーだ!


批判が強かったのは一本道? シナリオ? それとも両方?

ストーリーへの偏重、古典的なバトルシステムと海外で蔑まされる日本産RPG批判へのカウンターとして、あえてメインストーリーに完全フォーカスする「一本道」システムを採用したFF13。
その「一本道」システム自体に好き嫌いがあったり、システムとしての完成度に賛否があったりしても、少なくとも、困難な道に覚悟をもってチャレンジしたことは評価に値するでしょう。

しかし、その「一本道」システムに搭載されたシナリオがここまでお粗末では、批判されて当然です。
先ほどあらすじを長々と書きましたが、FF13は途中のプロットがユーザーを混乱させること以外の機能を全く果たしていないので、
突然、死に匹敵する不幸に見舞われた。
神に祈ったら、奇跡が起きて解決した。
と要約すれば、一切の矛盾なく全てを説明できてしまいます。うさんくさい新興宗教のドグマでももう少しまともなロジックをつけますよ。ちなみに特定の作品の熱烈なファンを『信者』ということがあり、FFシリーズも熱心な『FF信者』が多いことで知られていますが、本当に宗教みたいなシナリオがでてくるとは思ってもみませんでした。

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出典:SQUARE ENIX『Final Fantasy XIII』

ミソとクソ
ここまで破滅的な出来のシナリオに関わらず、開発側は「一本道シナリオ」への批判を、「一本道」の部分に問題があったと誤認します。
参考:
[GDC 2010]FF13はなぜ“一本道”なのか。ディレクターの鳥山氏自らそのゲームデザインについて語った「The Crystal Myth and FFXIII」をレポート
北瀬佳範氏スペシャルインタビュー|FINAL FANTASY XIII-2
この判断に至った原因はおおよそ以下の4点からなると考えられます。
シナリオの欠点を隠した演出
ハッピーエンド
制作体制の問題
ミソとクソを混同した批判


① シナリオの欠点を隠した演出

FF13の最大の欠点はシナリオだとすれば、最大の評価点は演出です。世界観やキャラクター設定に関するロジックが欠落しているにも関わらず、それを覆い尽くすほどアツい場面が展開されます。
これを実現したのは、スーパーアニメーターとして名高い金田伊功さんの力でしょう。金田さんは『風の谷のナウシカ』でも、アスベルがトルメキア飛行艦隊を奇襲するシーン、『となりのトトロ』ではお風呂場でおおはしゃぎするシーンをはじめ、長い間ジブリ中核メンバーとして躍動感が必要とされるシーンを中心に担当された方で、近くのものを過剰に大きく見せる独特の遠近法(『金田パース』)、まるで生きているかのように光や炎を動かす描写(『光と爆発の金田』)で有名ですが、FF13ではほとんど全てのイベントシーンの絵コンテを担当されています。

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出典:スタジオジブリ『風の谷のナウシカ』

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出典:スタジオジブリ『となりのトトロ』

この演出の凄さはセリフが少ないとより際立ちます。
例えば、第2章 ハングドエッジで主人公らが侵入したファルシ=アニマに対して、下からサーチライト、上(飛行艦隊)からはワイヤーを打ち込むことで、集中線のような効果を発揮させ、そうして真ん中に集めておいた視点からフワっとした放射状の光の流線が先行し、遅れて衝撃波で周りの建物が全て崩壊していきます。これはアニメや漫画的な表現方法でありながら違和感なく取り入れられ、結果、非常に迫力ある映像に仕上がっています。

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出典:SQUARE ENIX『Final Fantasy XIII』

他にも第7章のホープ家襲撃のリアルタイムカットシーン(通常ゲーム画面のままで起こるイベント)、第12章冒頭のコクーン再突入時のプリレンダリングシーン(いわゆるCGムービー)は目を見張るものがあります。


② ハッピーエンド

主人公らの当初の目的は「敵側の神の下僕となってしまった近親者や恋人の救済」です。その後のシナリオは上述した通り、深刻なロジック破綻を起こしているものの、シナリオの結論たるエンディングだけに注目すると、奇跡が起きてこの目的が達成されます。
合間に起こる理屈を抜きにして、主人公たちの願いが成就され、ハッピーエンドとなるのであれば、満足感やカタルシスを得られる方もいるかと思います。それも1つの考え方としてありえます。


③ 制作体制の問題

FF13でシナリオを担当したのは鳥山求さんです。鳥山さんは開発現場の監督ポジションにあたるディレクターも兼任しています。これでは、シナリオの粗にスタッフが気づいたとしても、自分の上司に対して
「あなたの仕事は正直なってない!」
と言い放つようなものであり、サラリーマンとしてはハードルが高いといえます。


④ ミソとクソを混同した批判

「一本道シナリオ」という言葉は、「一本道」と「シナリオ」から構成されています。上述した通り、プレイヤーの選択肢を奪う「一本道」とはあくまでもゲームデザインの話であり、「シナリオ」とは全く別の物です。つまり、FFがシナリオ重視のゲームであるという観点からいえば、「一本道」システムは「シナリオ」の見せ方の1つに過ぎません。
だからこそ、「一本道」に対する賛否と「シナリオ」に対する賛否は、本来厳密に分けて論じるべきであって、過剰な嫌悪の感情から「一本道シナリオだからつまらない」としてしまうのは、ミソもクソも一緒にしてしまうようなものです。
これが起こると、批判された側が批判された論点を取り違えるリスクがある上、「ユーザーはミソもクソも分からんバカだから、簡単に手抜きできるな」という印象を与えるリスクすらあります。

これらを踏まえた上で「一本道シナリオ」に対する冷静な評価とは、
国内:「一本道」は賛否半々、「シナリオ」は酷い。
海外:Too linear and bad storyline.
といったところではなかったでしょうか。


これら4つの要素のうち、何が最も決め手になったか分かりませんが、ユーザーとしては④に関してはついつい陥りがちな部分なので、自戒も込めて気をつけていかなければならないでしょう。

トドメを刺したFF13-2
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続編となるFF13-2では、「一本道シナリオ」のうち、「一本道」の部分のみ改善が施され、発売されました。もちろん、これまで指摘したシナリオの問題点はほとんど解決していません。それどころか、

  • シナリオが完結しない。
  • ゲーム中の全ての行動を無にする結末
といった、"狂信的信者"ですら目が覚めるほど酷い問題点が追加されます。

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出典:SQUARE ENIX『Final Fantasy XIII-2』

本編+DLC(発売後に有料配信された後日談)を含めたFF13-2のシナリオを要約すると、次のようになります。
いなくなったおねえちゃんに会いたい。
世界が崩壊しました。でもおねえちゃんに会えたから満足。続く。

FF13でシナリオの不出来を隠していた大きな要素であるハッピーエンドを捨て去った時点で何が起きるかは明白でしたが、このシナリオを肯定的に捉える真っ当な批評はほぼ皆無でした。

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出典:SQUARE ENIX『Final Fantasy XIII-2』

バッドエンドで終わる作品がイコール質の悪い作品ではありません。なので、FF13-2のように報われないエンディングであること自体は、好き嫌いといった好みの問題はあるにせよ、直ちに批判の対象となるものでは本来ありません。
しかし、FF13-2の場合、批判が集中したエンディングを含むシナリオ全体がもはや擁護不可能なほどに酷いといえます。最大の問題点はこのシナリオはユーザーに対して何をメッセージとして発しているのかです。

  • 大切な人のためなら、邪魔になる人は全て殺し、障害物を全て壊してもOK!
  • 家族に会いたいという思いは、大量殺戮と同じ質の感情だ!
これらは、自分さえよければ他人なんてどうなっても構わないということで、いじめ・差別・テロ・戦争などを全面肯定する危険な思想につながります。
怒りすら覚えるほど倫理観の欠如が甚だしい。こういうことは、かりそめだとしても口より出すべきではない。

そして、仮に開発側がどのような意図をもっていようと、決して安くないゲームを最後までプレイして「To be continued」とされれば、ユーザーは「バカにされた」「開発資金の回収に利用された」と思うのが当然であり、それは結果としてブランドの価値を自ら傷つける行為に他なりません。

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出典:SQUARE ENIX『Final Fantasy XIII-2』

そして、売れなくなったFF
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出典:SQUARE ENIX『LIGHTNING RETURNS: FINAL FANTASY XIII』

「To be continued」とした以上、当然続編FF13-3(正式タイトルは『ライトニング リターンズ ファイナルファンタジーXIII』、公式略称は『LRFF13』)が発売されましたが、これまでのFFでは考えられないような2つのことが表面化します。
話題にすらならなかった。
強烈なネガティブキャンペーン。

① 話題にすらならなかった

これは検索ワードのトレンドを見れば一目瞭然です。

もはやFF13発売当初の盛り上がりは、跡形もなくなっていました。
セールスに関しても、日本国内における初週販売本数は、
FF13   150万本
FF13-2 53.4万本
FF13-3 28.1万本
となり、前作から半減。前々作の約6分の1まで落ち込みました(メディアクリエイトによる推計 )。また、30万本という水準は、日本の他メーカーから家庭用ゲーム機向けに発売されている『ペルソナ』シリーズ(アトラス)、『テイルズ オブ』シリーズ(バンダイナムコゲームス)の売上本数に劣る水準です。

そして、推測となってしまうものの、この水準はスクウェア・エニックスが目標としていた販売本数を下回っています。ユーザーの猛烈な不評をかったFF13-2ですら、2012年3月期の有価証券報告書

当連結会計年度は、家庭用ゲーム機向けの大型タイトル(「ファイナルファンタジーXIII-2(日米欧)」、「Deus Ex: Human Revolution(米欧日)」)が順調にパッケージソフト販売を伸ばしました。


と記載されています。有報上のこのような記載は、金融用語的に「当初予算を超える売上もしくは利益を上げました」と読み替えます。
しかし、FF13-3は、IRレポート(投資家向けに発表する資料)上での言及はありません(2014年3月期第2四半期決算説明会資料の中で発売予定ソフト一覧に載っているだけ)。それでも、予算の中核を担っている事業内容だった場合は、投資家やアナリストから突っ込まれるのが必至なので事前に言及しておくのがマナーとされますが(FF14に関する騒動などがこれに当たる)、それすらありません。それはすなわち投資家側の関心もないということです。

あらゆる関係者が話題にしなくなってしまったFF13-3。
その姿は国民的RPGでもなんでもなく、多額の予算をつぎ込んだけどあまり売れなかった数多あるゲームの1つというものです。


② 強烈なネガティブキャンペーン

FF13-3はこれまでにないほどのネガティブキャンペーンにさらされました。その中心となったのはいわゆる「2chまとめサイト」で、その批判は冷やかし半分のものから非常に真っ当なものまで様々でしたが、共通していたのは「FF13はダサい」という印象を読者に与えることだったと思います。これはゲームのような嗜好品に対するネガティブキャンペーンとしてはかなり効果的で、FF13-3をプレイすること=センスのない人とみなされるリスクをユーザーは背負い込むことになります。なので、「そんなのかんけーねー!どんなFFでも買うんだ!」という人しか購入できないような雰囲気や、仮に購入したとしても他人に薦めるのは躊躇われる風潮が発売前に作り出されました。
スクウェア・エニックスもこの動きに対応して、公式HPにゲーム雑誌などのレビューを載せるなどしていましたが、ゲーム雑誌は大型プロジェクトと共存関係(大型プロジェクトの特集を組めば雑誌が売れるので、厳しい批判はビジネス上書きづらい)なので、「ステマ乙」と一蹴され、有効に機能したとはいえませんでした。

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出典:SQUARE ENIX『LIGHTNING RETURNS: FINAL FANTASY XIII』HP

また、この問題が深刻なのは、今後も沈静化する見込みがないことです。欠点が多かったものの、解析してみれば突出した評価点があったFF12とは違い、FF13シリーズは関連情報の全てが公知済みであり、その上で厳しい評価が下されているため、今後もおそらく評価が好転することはないでしょう。なので、FF13発売前のような「時間が信用を回復」する効果が今後働くかは極めて微妙だといえます。
すでにナンバリングタイトルの次回作としてFF15の発売が発表されていますが、ゲームのスクリーンショットやムービーが公開された結果、あっという間に「ホストファンタジー」とされ、ネガティブなコメントが溢れていました。

FF13-3は良作だったのか?
発売前から厳しい状況となったFF13-3ですが、では内容はどうだったでしょうか?

FF13-3で最も評価できるのは、広大なマップを自由に探索できるオープンワールドの導入、コミュニケーションを伴わない緩いオンライン連携の2点でしょう。特に前者は、「流行りのオープンワールドだからGood」ということではなく、大規模オンラインゲームを運用している会社らしく、移動中に自動で行われるデータロードや時間帯によって敵・景色・人々の生活を変化させるなど、多くの要素がほぼ問題なくワークしています。しいていえば、クエストの発生バランスがおかしく、システムに慣れてタイムマネージメントをうまくこなすほど退屈になるという仕組みは残念であるものの、それを差し引いてもなお、プラスの評価ができるでしょう。

しかし、それ以外はやはり多くの問題を抱えていて、全体を通して肯定的な評価など到底できません。特に目立つのは以下の4つです。
相変わらずの破綻したシナリオ
未熟な演出
グラフィックの劣化
定まらないターゲット層

① 相変わらずの酷いシナリオ

FF13、FF13-2でも問題があり、多くの批判を浴びましたが、今作にいたっても改善されていません。まず、目につくのがロジックの欠如です。いくつか実例を挙げてみると・・・

例1)
主人公の目的は死んでしまった妹を生き返らせることですが、容姿がその妹にそっくりで明らかに思わせぶりなキャラクターがゲーム冒頭から登場するにも関わらず、「おまえは妹か?」や「なんで妹の姿をしている?」といった最初に、そして当然に疑問に思うことを一切聞きません。かわりに本質的ではない会話に終始します。

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例2)
尾行ミッションで対象者を追跡中、その対象者が敵アジトに入るための暗証番号を呟くのをせっかく聞いたのに、「今の数字は使えないだろう」と唐突に断言します。一度も試さずに使えないことが分かっちゃう人なんて、おそらくエスパーだけでしょう。

例3)
主人公がかつての仲間に会うためにその住居を訪れた際、ドアが凍っていて開きませんが、炎の魔法やアイテムを使用して溶かすといったRPGの定番行動を一切試さず、「これは強い思いの力で凍っている。これは普通の方法では開かないぞ!」と唐突に断言します。それなんてエスパー・・・

例4)
かつての仲間がモンスター化してしまったとき、主人公がお願いするだけで人に戻ります。一度モンスター化してしまった人を元に戻せるのは、とある神の力だけとしてきたFF13の設定を完全に無視していて、仮にFF13-3での主人公が半神半人になっているから奇跡が起こせたんだと好意的に解釈しても、今度はFF13-2で設定された神の力が使えないというところと整合性がとれなくなってしまい、いずれにせよ設定矛盾となっています。

例5,6,7,,,,,,,,,,)

これらはほんの一部の例に過ぎず、メイン・サブ問わず多くのイベントでロジックが破綻しています。仮にゲームキャラクターがエスパーであっても、おそらくほとんどのユーザーがエスパーではありませんので、ロジックの欠如は感情移入や物語への理解が阻害されることにダイレクトに繋がります。
ドラマ性やカタルシスを得ることを優先させるため、あえて細かい理屈の破綻には目をつむることはよく用いられるライティングテクニックですが、始めから終わりまで、ほぼ全てのシーンでロジックを無視するのはどう考えてもおかしいでしょう。


また、ディレクターの鳥山求さんはFF13-3に関して、

(花言葉をたくさんもつ)薔薇の花のように、たくさんのコンセプトがつまっています

2012年9月1日の「ファイナルファンタジー展」より

と説明していましたが、実際のシナリオの中身はスッカスカです。

FF13-3での主人公の役割は、「FF13-2で滅んでしまった世界において、神の下僕となって、人々の魂を新たな世界へ導く」というものです。そして、最終的には新世界創世の際に死者を生き返らすか否かで神と対立し、神を殺して事実上の新世界の神となって、生者はもちろん、妹も、死者も、みんな生き返って新世界へ転生しハッピーエンドとします。
コンセプト自体はよくある「終末世界における救世主物語」ですが、このような話の場合、

  • 時間の概念が消失した世界で、長すぎる生や終わらない悲しみの感情に疲れきり、魂が老化してしまった人たちをどうやってもう一度前向きにさせるか。
  • 「誰を救い、誰を見捨てるか」といった、いわゆる『ノアの方舟』判断。
  • 救われる者とそうでない者の対立。
  • 救われる者ゆえの苦悩。
  • 世界の死を知ってしまったときに表面化する人間性への解釈。
のような人間の本質に関わる命題に向き合うことが期待されます。しかし、FF13-3では、これらは全くといってよいほど言及されません。

かわりにフォーカスされる要素は、無理矢理にでもハッピーエンドにもっていくためなのか、究極と思えるほど単純化されます。
例えば、人々の思想です。FF13-3での死者は、「1人の例外なく全員が新しい世界に生まれ変わりたいと願っている」と本編で説明されます。オープンワールドは「現実世界の箱庭」と言われるように、そこに存在するものが多様性をもち、それらと対峙した上でどのように折り合いをつけていくのかがシナリオのキモとなりますが、本作ではそれをばっさりと切り捨て「みんなこう思っている」と単純化されてしまいます。このことで、キャラクター数は多いものの、実際には1人としか会話していないのと同じ状況になってしまっています。

他にも、敵との対立点となる「輪廻転生」も単純に描かれます。「輪廻転生」は宗教的に非常に取り扱いが難しく、特に転生条件となる「善き行いをすれば」という部分が、
善き行い
味方のために敵を殺すこと。
大切なもののためなら自分の命すら容易く投げ出すこと。
理不尽に耐え忍びことこそが、魂の向上や徳を積むことに繋がること。
のように解釈され、自爆テロや差別の助長、人命を軽視する風潮など、多くの問題と容易にリンクしてしまうとされています。簡単にいえば、「次の世界に生まれ変われるんだから、今の世界では死んだっていいや/今いじめにあっているけど、我慢しておけば、次の世界できっと報われるはず」ということです。
なので、「輪廻転生」の存在を認める宗教では様々な手当をしてこの問題を回避しようとしていますが・・・

FF13-3では「輪廻転生」を「生まれ変われたら勝ち、生まれ変われなかったら負け」という観点でしか表現されないため、テーマ自体が抱える深い意味合いが完全にスポイルされてしまっています。当然、このような単純構造に巻き込まれるユーザーは、プレイした後、非常に薄っぺらい感想しか抱くことが出来ません。
さらにFF13シリーズの主人公は一貫して「妹のためなら、邪魔になる人を殺すのOK、障害物を全て壊してもOK!」という思想の持ち、実際そのように行動します。これって「輪廻転生」で問題とされている部分そのものですよね。死者が生き返れないことに憤激して神を殺すのも、とどのつまり、「妹が死者であるから」という理由だけです。こんな危険なジコチュー主人公が、新しい世界について

当たり前のように生きて暮らす人々が 力をあわせて築く世界だ

メインクエスト『光と闇の狩人』より引用

と語りますが・・・ こういうのを、普通は「偽善」といいます。

俺がこの世で一等嫌いなことはな、偽善だ。そいつは悪事よりもたちが悪い。相手だけじゃない、己自身すら欺く毒だ。匂いは薔薇の香りでも、糞が糞である事実は隠せない。

アニメ『BLACK LAGOON Roberta's Blood Trail』 張維新のセリフより

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② 未熟な演出

FF13ではシナリオの欠点をカバーし、FF13-2でも及第点の出来だった演出でしたが、FF13-3では非常に残念な出来となっています。
リアルタイムカットシーンの多くは、高低差やスピードの強弱をつけたカメラワークが控えられ、ゆっくりとした横移動を中心に構成されているため、画面上から動きのダイナミックさが失われています。

また、特に酷いのが『解放者の伝説』という劇中劇です。ゲーム内における劇中劇は演出家の腕の見せどころであり、FFシリーズにおいても、FF6の『セリスのオペラ』やFF9の『君の小鳥になりたい』は、作品の評価とは別に、それ単体のシーンとして非常に評価されています。

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出典:SQUARE ENIX『Final Fantasy Ⅵ』

FF13-3での『解放者の伝説』では、主人公がたった1人で舞台に立ち、ストーリー性も何もない意味不明なことを呟きながら剣を振り回すだけです。劇としての面白みは皆無であることはもちろん、あげくの果てに、事前のイベントとして唯一練習したセリフすらトチっています。悪い意味で、全くスキがありません(笑)

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出典:SQUARE ENIX『LIGHTNING RETURNS: FINAL FANTASY XIII』

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FF13-3ではどのスタッフが絵コンテをきっているかスタッフロールから完全には判別できないものの、少なくともチェックする立場である田中雄介さんの責任は重いといえます。

一行には芝居の才能がなかった・・・

FF6 『セリスのオペラ』 ゲームオーバーより



③ グラフィックの劣化

FFシリーズは新作を出すごとにグラフィックのレベルを上げてきましたが、FF13-3は前作と比較してそのレベルを落としているといえます。エンディングのプリレンダリングシーンをもってグラフィックが進化していると言っている人もいるようですが、その半面、通常マップのグラフィックレベルは明らかに低下しています。
水や森、草といった部分のテクスチャは基本的にコピペされていて、建物や壁といった構造物には粗いテクスチャも目につきます。エフェクトも未熟で、砂漠では足跡すら残りません。これらはFF13のサンレス水郷やヲルバ郷と比較すれば、一目瞭然です。

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粗いといっても、それなりに見えるようにはなっているので、これをうまく手を抜いていると捉えるか、技術の劣化と捉えるかは人によって異なるでしょうが、FF13-3ディレクター鳥山求さんはFFの定義について

『FF』シリーズは作品ごとに変化を続けるゲームです。最新のハードウェアごとにスペックでの究極の技術の達成を目指しています。これはビジュアルだけでなく、バトルシステムにおいても同様です。
(中略)
これら2つの要素はどのFFでも守り抜いて行くことを約束します。

GAME Watch「Game Developers Conference(GDC) 2010現地レポート」より

と語っているため、その観点からすれば、このグラフィックでは物足りないし、「広告に偽りあり」といえます。


④ 定まらないターゲット層

一体FF13-3は誰に向けて作られたゲームか、ということです。
まず、シナリオですが、これはFF13シリーズをプレイしたことない人向けに作られています。このシリーズの特徴として造語がとにかく多いというものがありましたが、FF13-3ではその数をぐっと減らした上、造語が絡んだ会話の際は「ようは〜ってことだな」「たしかこれは〜だったな」「つまり〜すればいいわけか」など、涙ぐましい説明口調が繰り返し登場します。なかには、水戸黄門もびっくり、チャンバラしている真っ最中に、事件の背景から相手を殺す理由までを超早口でまくしたてるシーンすらあります(笑)

一方、それ以外は経験者・コアゲーマー向けにデザインされています。
特にそれが顕著なのはバトルシステムとキャラクターです。
FF13-3のバトルシステムは、これまでのFFシリーズのそれとは大きく異なります。敵の行動に合わせてタイミングよくボタンを押す必要があり、アクションゲームに近い仕様といえるでしょう。このような多くの人たちが初見であろうシステムを実装しているのにも関わらず、難易度は完全にコアゲーマー向けです。1周目は「イージー」「ノーマル」(2週目はこれに「ハード」が追加)が選択可能ですが、ほとんどのユーザーが最初に選択するであろう1周目の「ノーマル」は2周目の「ハード」よりも難易度が高いと言われるほどのバランスになっていて、実際、FF13シリーズ経験者でさえバトルが難しすぎて早々にゲームを進行することができなくなるような状態でした。

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出典:SQUARE ENIX『LIGHTNING RETURNS: FINAL FANTASY XIII』

なので、ゲーム雑誌、攻略サイトといったあらゆるメディア、そして公式においてさえ、1周目はイージーを推奨するほどの事態に陥りました。
参考 :『ライトニング リターンズ FFXIII』の1周目はイージーモード推奨! 開発スタッフインタビュー第7回(プロデューサー&ディレクター編)
しかも、この「ノーマル」は1周目では難しすぎる、2周目では簡単過ぎるという、実際は全く意味のない項目だったりします。
このように、難易度調整を明らかに失敗しており、通常のナンバリングタイトル購買層であるライトユーザー層がほとんど購入していなかったために辛うじて助かっただけで、本来であればFF12に寄せられた批判と同様のものを受けていたことは想像に難くありません。

また、キャラクターに関しては、簡潔にいうならば「美少女コスプレゲー」です。
ゲーム開発費が高騰している現在、ゲーム制作では思い切ったチャンレンジをしづらくなっています。なので、低予算でもコアゲーマーから一定の回収が見込める、いわゆる美少女を売りにするゲームが大幅に増加し、結果、似たような商品が市場に氾濫してしまって、それが市場縮小の一因にもなっています。
そんな中だからこそ、『国民的RPG』であるFFシリーズには意欲的な正統派タイトルが期待されていましたが、FF13-3は供給が充足している美少女売りゲームとして作られていて、マーケティングでも大々的にその側面がプッシュされていました。

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出典:SQUARE ENIX『LIGHTNING RETURNS: FINAL FANTASY XIII』

参考:
「LIGHTNING RETURNS: FINAL FANTASY XIII」,死者の声を聞ける聖女「ヲルバ=ダイア・ヴァニラ」や,3種類の新たなウェアの情報が公開
祝『LIGHTNING RETURNS:FINAL FANTASY XIII』発売! ライトニングを彩る"ウェア"が大集合! アンケートも実施! 【ライトニングサーガ 第4回】
公式サイト【LRFFXIII】ライトニングコレクション2013 in ルクセリオ
このような「主人公の女性キャラクターに色々な衣装を着せて楽しむ」ことをセールスポイントとしたことは、FF13-3を買ったユーザーというよりも、買わなかったユーザーにより強い悪印象を与えているといえます。プレイすることで意味が分かるストーリーやシステムなどと違い、ただ見るだけで意味が分かる要素だからです。
発売前に「ああ、FFってここまで落ちぶれたか・・・」という主旨のコメントで溢れた理由の一端は明らかにこれでした。

これらのことから、FF13-3は想定ターゲットがちぐはぐであり、1つの作品としてうまくディレクションされていないといえます。


続きは次の記事へ :FFの迷走について真面目に考えてみた。 Ⅲ

※ 主にFF13シリーズの内容、今後のFFの展望について言及しています。

前の記事はこちら :FFの迷走について真面目に考えてみた。 Ⅰ

※ 主にFF12の内容について言及しています。    


追悼の辞

FF13で絵コンテを担当された金田伊功さんは、去る2009年7月21日、心筋梗塞のため57歳の若さで急逝されました。
アニメ・ゲームといったジャンルの垣根を気にすることなく活躍され、金田さんの指先から創りだされた手法は、広く模倣・発展されながら今や多くの作品でその片鱗を見ることができます。そんな場面を見るたびに、お亡くなりになった後も、IKO魂溢れるカッコよさと終わることのない楽しさを私たちに与えてくれているように感じます。
心よりご冥福をお祈りします。

K_shell 年代:30代 職業:金融 ファイナルファンタジー FF13 FF13-2 LRFF13 ゲーム 鳥山求 olds
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